居抜き・造作譲渡の進め方──事業譲渡との違いと、確認する7項目
安全と透明性を、最優先に設計しております。
「居抜きで渡せば原状回復をしなくて済む」と聞いて動き始めたものの、退去のときに請求が来てしまった、というご相談をいただくことがあります。居抜き・造作譲渡は便利な方法ですが、何が移って何が移らないのかを取り違えると、あとから費用が戻ってきます。事業譲渡との違いと、契約前に確認する7項目を整理しました。
1. 最初に決めるのは「何を渡すか」
まず、言葉を整理します。店舗を手放す方法は次の4つに分かれ、居抜き(造作)譲渡は、このうち最も渡す範囲が狭い形です。渡す範囲が狭いぶん手続きは軽くなりますが、受け取れる金額も設備の対価にとどまります。
| 売り方 | 渡すもの | 借入・赤字の扱い | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 会社譲渡 | 法人そのもの(株式・持分) | 借入金・赤字・保証も一緒に引き継がれる | 法人ごと引き継いでほしい。許認可や契約を切らずに残したい |
| 事業譲渡 | 店舗の事業一式(設備・顧客・契約) | 合意したものだけが移る | 複数店のうち1店だけ手放す。法人は残す |
| 経営資源譲渡 | 設備・顧客名簿など、個別の資産 | 引き継がれない | 事業としてではなく、使えるものだけを渡したい |
| 居抜き譲渡 | 内装・造作・設備 | 引き継がれない | 原状回復を避けたい。物件は買い手が貸主と新たに契約する |
居抜き譲渡では、内装・造作・設備だけが買い手に移ります。物件そのものは移りません。買い手は貸主と新しく賃貸借契約を結び、売り手は自分の賃貸借契約を解約します。つまり、売り手・買い手・貸主の三者が関わる取引です。この三者のうち一人でも合意していないと成立しません。
2. 閉店を決める前に確認する5点
居抜き・造作譲渡で問題になるのは、ほぼ次の7項目に集約されます。上から順に確認してください。
| 確認すること | なぜ効いてくるか | 確認先 |
|---|---|---|
| ① 貸主の承諾 | 貸主が新しい借主と契約してくれなければ、そもそも成立しません。無断で造作を売ると契約違反になりかねません。最初に確認する項目です | 貸主・管理会社・賃貸借契約書 |
| ② 売り手の原状回復義務 | 最も誤解の多い項目です。造作を買い手に売っても、売り手と貸主の間の原状回復義務が当然に消えるわけではありません。免除するなら、貸主との間で書面に残す必要があります | 貸主・賃貸借契約書 |
| ③ 保証金の扱い | 売り手が差し入れた保証金を、買い手から直接受け取るのか、貸主経由で精算するのかで手取りが変わります。三者で先に決めてください | 貸主・管理会社 |
| ④ 設備の所有権 | リース・割賦の残っている設備は、所有権が売り手にありません。前の借主が勝手に譲渡することはできません | リース会社・リース契約書 |
| ⑤ 造作の範囲 | 何が造作で、何が動産かの線引きです。エアコン・照明・看板・什器のどれを含むのかを、一覧にして契約書に添付してください | 売り手・買い手・図面 |
| ⑥ 引き渡し日と解約日 | 売り手の解約日と買い手の契約開始日が空くと、その期間の家賃を誰が負担するかが問題になります | 貸主・管理会社 |
| ⑦ 設備の不具合と瑕疵の扱い | 引き渡し後に故障が見つかったときの責任範囲です。「現状有姿」とするか、一定期間の対応を約束するかを決めます | 売り手・買い手・契約書 |
解約予告を出す前にご確認ください。解約日が決まってしまうと買い手の検討期間が足りず、居抜きで渡せたはずの設備を自費で撤去することになりがちです。
3. 値段はどう決まるか
造作譲渡の価格は、買い手が一からスケルトンで作った場合の費用との差額が根拠になります。そのまま使える設備が多いほど、また残存期間の長い賃貸借契約が付いているほど、評価は上がります。逆に、業態を限定する特殊な造作は、買い手を選ぶため価格が伸びにくくなります。もうひとつ売り手が見落としがちなのが、「譲渡価格」と「原状回復を免れる金額」は別だということです。造作の対価が100万円でも、原状回復に300万円かかる予定だったのなら、実質の経済効果は400万円になります。値段を判断するときは、この2つを足して考えてください。
andMA では、譲渡希望額とあわせて、引き継ぐ借入金・リース残・連帯保証(居抜き譲渡は保証金と原状回復義務)を「なし」も含めて申告いただきます。裏側まで先に開示された案件のほうが、買い手の検討が早く進みます。詳しくは安全と透明性への取り組みをご覧ください。手数料の考え方は利用料金にすべて公開しています。
4. 買い手はどこにいるか
居抜き案件の買い手は、業種によって集まる場所が違います。飲食・美容は居抜き物件サイトにも出ますが、それ以外の業種はM&Aのプラットフォームのほうが動いています。買い手は次のような層です。
- 同じ業態で開業する個人・法人:内装と設備が揃っているぶん、開業費用と工期を大きく圧縮できます
- 同業の多店舗化:すでに店舗を持っていて、エリアを広げたい事業者
- 近接業態からの転用:給排水・排気・電気容量・天井高など、同じ設備条件を使える別業態
andMA には、買い手があらかじめ条件を登録する買いニーズがあります。掲載前でも、自店の条件に近い買い手がいるかを確認できます。公開中の案件は案件一覧でご覧いただけます。
5. andMA での進め方
掲載から成約まで、売り手の費用は0円です(掲載料・月額費・中間金・成約手数料のすべて)。買い手は成約したときだけ、成約価格の2%(税別・最低20万円)をお支払いいただきます。契約書の確認やデューデリジェンスが必要な場面では、提携する弁護士・公認会計士・税理士をスポットで手配できます(費用は別途)。
- STEP 1無料登録・下書き店名や所在地は伏せたまま、業種・エリア・規模で掲載できます。
- STEP 2引き継ぐものを申告借入・リース残・保証、保証金・原状回復義務を「なし」も含めて記入します。
- STEP 3公開・打診を受ける運営が内容を確認してから公開します。関心のある買い手から交渉の申し込みが届きます。
- STEP 4面談・契約・引き継ぎ当事者間で条件を詰めます。必要に応じて士業をスポットでご紹介します。
6. 掲載前にそろえておく資料
先に手元にあると、買い手の検討が早く進みます。すべてが揃っていなくても掲載はできます。
- 賃貸借契約書(原状回復条項・用途・残存期間・保証金の額)
- 造作・設備の一覧(含むもの/含まないものを分けて)
- 内装の図面と、給排水・排気・電気容量の仕様
- 設備のリース/割賦契約書と、残債の額
- 原状回復の見積書(取っていれば)
- 店内の写真(全体・設備・外観)
- 直近の水道光熱費(設備の稼働状況が分かるもの)
ほかの業種のガイド
インドアゴルフ・ゴルフスタジオパーソナルジム・無人ジム美容室・サロン飲食店カフェ整体院・接骨院エステサロンヨガ・ピラティススタジオ学習塾コインランドリー
売り方そのものは居抜き・造作譲渡の進め方、手数料は利用料金、進め方はご利用の流れをご覧ください。
よくある質問
居抜き譲渡と事業譲渡は何が違いますか?
渡す範囲が違います。居抜き譲渡は内装・造作・設備を渡し、物件は買い手が貸主と新たに契約します。事業譲渡は設備に加えて顧客・契約など事業一式を渡し、合意したものだけが移ります。顧客基盤を引き継いでほしい場合は事業譲渡、設備だけを渡して原状回復を避けたい場合は居抜き譲渡が向きます。
造作譲渡をすれば、原状回復はしなくてよいのですか?
自動的に免除されるわけではありません。原状回復義務は売り手と貸主の賃貸借契約にもとづくもので、買い手に造作を売ったことで当然に消えるものではないためです。貸主の承諾を得たうえで、売り手の原状回復義務をどう扱うかを必ず書面に残してください。口頭で済ませると、退去時に請求が来ることがあります。
貸主が承諾してくれない場合はどうなりますか?
居抜きでの引き渡しはできません。売り手は原状回復を行って退去することになります。そのため、造作譲渡を考え始めた段階で、まず貸主・管理会社に相談してください。承諾の見込みが分かると、そもそもどの売り方を選ぶべきかがはっきりします。
リース中の設備は渡せますか?
所有権がリース会社にあるため、前の借主が勝手に譲渡することはできません。残債の額と、リース会社が名義変更に応じるかを確認したうえで、買い手が引き継ぐ、売り手が一括で清算する、設備を外して渡す、のいずれかを選びます。この確認を後回しにすると、契約直前で止まります。
保証金は戻ってきますか?
賃貸借契約の内容と、三者の合意によります。売り手の保証金を貸主が返還し、買い手が新たに差し入れる形が基本ですが、買い手から売り手へ直接支払う形で整理することもあります。いずれにせよ、金額と経路を先に決めておかないと、引き渡し直前で揉めます。
居抜きで買うとき、一番気をつけることは何ですか?
原状回復義務とリース残債の2つです。「自分も居抜きで出られる」と誤認したまま契約すると、退店時にスケルトン戻しの費用がかかります。また、設備がリース物件であれば、前の借主が渡せるものではありません。この2点は、契約前に必ず書面で確認してください。